かわつひろし建築工房 | SMH
22443
portfolio_page-template-default,single,single-portfolio_page,postid-22443,qode-social-login-1.0.2,qode-restaurant-1.0,,select-theme-ver-4.6,vertical_menu_enabled,wpb-js-composer js-comp-ver-5.5.5,vc_responsive

SMH

S.M.Hは1961(S36)年に門司市初の精神科病院として開設され、現在は精神科急性期治療病棟、精神療養病棟、認知症治療病棟のある191床を有する病院です。

本建築はその外来管理棟の増改築計画です。

敷地は福岡県北九州市門司区にあり、九州自動車道路の新門司インターより、広い県道(新門司港大里線)を新門司港方面へ500mほど進んだ、農地と里山とまばらな民家が点在する市街化調整区域に位置しています。既存外来管理棟はこの県道に面し、背面に数回の増築を経た病棟が連なっていました。既存外来管理棟は、1988(S63)年に竣工し2006(H18)年にエントランス及びバックヤードを増築した、延床面積1020㎡、3階建、RC造一部S造(増築部)の建物でした。

コンセプトを「新しい印象を創るーけしきの更新」とし、以下の方針を提案しました。

(「けしき(景色・気色)」とは風景・風情・様子・きざしの意)

心に残りにくい近隣景観、雑然とした印象を受けた既存建物、高速で通り過ぎる環境、これら状況への答えとして「けしきの更新」を目指しました。

暗い鉄紺(てつこん)色のモノリシックなボリュームがキャンチレバーにより浮遊しています。この外観は周辺環境から際立ち、病院の印象の統合を意図しました。その壁面を覆う白銀色のアルミエキスパンドメタルのベールは、空や空気の色、さらに視点の移動により刻々と表情が変化し、環境との同化を図っています。またこのベールは背面の照明により、華やかで幻想的な印象に変化します。このベールは道路側の西・南面に設けられ、日射を制御する機能も併せ持っています。

本計画と既存棟との間には背面の里山の飛び地を模した森(中庭)を設け、このまとまった緑がアプローチのアイストップとなって来院者をエントランスへ導びきます。

内部はシンプルかつ回遊性があり、どこからも目的地が分かる視認性の高い計画としました。エントランスから直進した正面の壁には銀箔を貼り上げ、既存吹抜を利用し上部より不織布スクリーンを吊り下げました。箔やスクリーン、またエントランスから待合へ続く不揃いな天井ルーバーには、中庭や吹き抜けから入る自然光が鈍く反射します。水面の揺らぎのようなゆらゆらとした印象に、水の底に沈んだ静謐さが感じられる空間となりました。四季のうつろいが間近に見える中庭に開いた待合は、診療待機中の緊張を穏やかなものかえます。増築棟2階の管理部門に設けたテラスは、森のような中庭を挟んで病棟と向き合うバッファーゾーンとなっています。

所在地:福岡県北九州市
敷地面積:14430.05㎡
建築面積:7419.96㎡(増築部:264.92㎡)
延床面積:14096.05㎡(増築部:328.96㎡)
主体構造:鉄骨造
階数:地上2階建て
写真:YASHIRO PHOTO OFFICE