SMH

S.M.Hは1961(S36)年に門司市初の精神科病院として開設され、現在は精神科急性期治療病棟、精神療養病棟、認知症治療病棟のある191床を有する病院です。

本建築はその外来管理棟の増改築計画です。

敷地は福岡県北九州市門司区にあり、九州自動車道路の新門司インターより、広い県道(新門司港大里線)を新門司港方面へ500mほど進んだ、農地と里山とまばらな民家が点在する市街化調整区域に位置しています。既存外来管理棟はこの県道に面し、背面に数回の増築を経た病棟が連なっていました。既存外来管理棟は、1988(S63)年に竣工し2006(H18)年にエントランス及びバックヤードを増築した、延床面積1020㎡、3階建、RC造一部S造(増築部)の建物でした。

コンセプトを「新しい印象を創るーけしきの更新」とし、以下の方針を提案しました。

(「けしき(景色・気色)」とは風景・風情・様子・きざしの意)

心に残りにくい近隣景観、雑然とした印象を受けた既存建物、高速で通り過ぎる環境、これら状況への答えとして「けしきの更新」を目指しました。

暗い鉄紺(てつこん)色のモノリシックなボリュームがキャンチレバーにより浮遊しています。この外観は周辺環境から際立ち、病院の印象の統合を意図しました。その壁面を覆う白銀色のアルミエキスパンドメタルのベールは、空や空気の色、さらに視点の移動により刻々と表情が変化し、環境との同化を図っています。またこのベールは背面の照明により、華やかで幻想的な印象に変化します。このベールは道路側の西・南面に設けられ、日射を制御する機能も併せ持っています。

本計画と既存棟との間には背面の里山の飛び地を模した森(中庭)を設け、このまとまった緑がアプローチのアイストップとなって来院者をエントランスへ導びきます。

内部はシンプルかつ回遊性があり、どこからも目的地が分かる視認性の高い計画としました。エントランスから直進した正面の壁には銀箔を貼り上げ、既存吹抜を利用し上部より不織布スクリーンを吊り下げました。箔やスクリーン、またエントランスから待合へ続く不揃いな天井ルーバーには、中庭や吹き抜けから入る自然光が鈍く反射します。水面の揺らぎのようなゆらゆらとした印象に、水の底に沈んだ静謐さが感じられる空間となりました。四季のうつろいが間近に見える中庭に開いた待合は、診療待機中の緊張を穏やかなものかえます。増築棟2階の管理部門に設けたテラスは、森のような中庭を挟んで病棟と向き合うバッファーゾーンとなっています。

所在地:福岡県北九州市
敷地面積:14430.05㎡
建築面積:7419.96㎡(増築部:264.92㎡)
延床面積:14096.05㎡(増築部:328.96㎡)
主体構造:鉄骨造
階数:地上2階建て
写真:YASHIRO PHOTO OFFICE

MMH

熊本地震により被災した病院の建て替え復興計画

所在地:熊本県益城町
敷地面積:14627.5㎡
建築面積:2407.91㎡
延床面積:11615.01㎡
主体構造:鉄骨造
階数:6階建

NMC

N.M.Cは内科・小児科クリニックとして、先代よりこの街の医療を担ってきました。
古い住宅街の中の幹線でなく狭く曲った道路沿いにある立地は、口コミでの患者さんに来ていただける良いものであるようです。この地にふさわしい、狭い道路を抜けたところにぽっかりあいた日溜りのような空間をイメージして計画が始まりました。

敷地外に既存の駐車場があることから、建物を敷地の南側に寄せ、前面道路側にオープンスペースを設け車寄せとしました。敷地いっぱいを覆うような大きな屋根が日頃より弱くなった体や心を迎え入れ包み込みます。内外を分けるコンクリートの壁は屋根を支えず自立し、屋根との間にできた隙間が四周をまわる窓になっています。この窓は、街との関係をつくりつつ内部に必要な明るさを得るために、また夜間はクリニックから漏れる光が常夜灯のように町に安心感を与えるために存在します。1階は全てが診療スペースとなっており、中庭を中心にした回遊式の平面計画となっています。待合室・キッズコーナーには中空に浮いたプレイスペースがあります。見守りの出来る囲われた空間は子供達の基地であり、地域に開いた窓となっています。スタッフスペースのある2階は診察スペースのある1階とは意図的に切りはなした空間ではありますが、中庭の緑をふところにいだいた計画とすることでお互いの気配を感じあえる構成にしました。植栽は街とクリニック、1階と2階が程良い距離感となるために施されています。

  • 所在地:福岡県北九州市
  • 敷地面積:474.29㎡
  • 建築面積:244.97㎡
  • 延床面積:273.48㎡
  • 主体構造:鉄骨造
  • 階数:地上2階建
  • 写真:岡本 公二
福岡の住宅設計

NCC

40年前の建築を減築し仮設に利用しながら行った、小児科内科医院の建て替え計画です。この地域のかかりつけ医であった先代の意思を受け継いだことを表わすよう、旧医院の風情を残す配置、空間構成、仕上の計画を行いました。
自立したRC壁と、細い柱で支えられた屋根の隙間から入る直射でない光が、静かに空間を満たしています。道路側の濃い緑と対比する花木の多い繊細な緑に囲まれたこの建物は、古くからのなじみのような姿をして患者さんを迎え入れています。

  • 所在地:福岡県
  • 敷地面積:821.43㎡
  • 建築面積:266.03㎡
  • 延床面積:274.80㎡
  • 主体構造:鉄骨造
  • 階数:地上2階建
  • 写真:岡本 公二

YMP

自然公園内の別荘地に建つ住宅です。
広大な敷地ですが、ほとんどが斜面で利用できるのは道路沿いのわずかな部分しかなく、また法により道路から5m以上離すことが義務付けられているため、道路に沿った細長い建物になりました。勾配がある前面道路の高い位置からブリッジで2階にアプローチします。道路より低い位置になる西側面は極力窓を設けず、海岸を見渡す東側に大きな開口を集中させました。ハードな印象のある外側に対し、内部は温か味のある空間に仕上げました。

  • 所在地:福岡県
  • 敷地面積:4901.06㎡
  • 建築面積:255.22㎡
  • 延床面積:376.84㎡
  • 主体構造:RC造
  • 階数:地上2階建
  • 写真:岡本 公二

TCR

古い街並みの残る住宅街で先代より開院しているクリニック兼住宅の改装を伴う増築です。
直近で行われた増築による動線の不具合をシンプルに戻す事を主眼に計画しました
診療しながらの施工であったため、既存住宅部分の改装、仮診療所を兼ねるバックヤードの改装、既存医院部分の解体、そして増築に至るまでに足掛け3年の期間を要しました。素材やボリュームの違う3つのボックスにより構成された外観は、交通量の多い前面道路からのアイキャッチになります。
ハイサイドライトからの光が柔らかい表情を与える内部は、心地よい落ち着きのある空間となってます。

  • 所在地:福岡県
  • 敷地面積:494.91㎡
  • 建築面積:294,61㎡
  • 延床面積:450,24㎡
  • 主体構造:鉄骨造
  • 階数:地上2階建
  • 写真:岡本 公二

CYY

「てのひら盆栽」デザイナーのためのアトリエ付住宅です。
実家のあった静かな土地は幹線道路が通ったことで一変し、騒音と振動に悩まされる場所となってしまいました。
また、川に近いことで冠水しやすい土地でもありました。構造をRCにすることはこのような理由から採用されました。1階は教室もひらけるアトリエと写真撮影の出来る和室と水周りがあります。冠水を考えて全て土間仕様としました。
幹線道路からの騒音や視線に対する「しかけ」として2階の居住空間の周りには盆栽用の棚を兼ねたルーバーを巡らした奥行き深いバルコニーを配しました。

棚は「盆栽に囲まれて生活したい」というクライアントの望みと盆栽教室であることを示すサインとして機能します。

  • 所在地:福岡県
  • 敷地面積:210.89㎡
  • 建築面積:67.78㎡
  • 延床面積:102.11㎡
  • 主体構造:RC造
  • 階数:地上2階建
  • 写真:岡本 公二

PFN

いわゆるデザイナーズという奇をてらったあるいはストイックな形態やプランではない、デザイナーズ賃貸アパートメントというコンセプトでした。立地や対象となる家族像を検討し導かれたスタンダードなプランをていねいに作り込み、とくに人の手に触れるところに配慮したデザインを心掛けました。付加価値のある建物であるとクライアントよりP.F.N+(プラス)と名付けられました。

  • 所在地:福岡県
  • 敷地面積:492.276㎡
  • 建築面積:318.46㎡
  • 延床面積:1314.30㎡
  • 主体構造:鉄筋コンクリート
  • 階数:地上5階建
  • 写真:岡本 公二

AKT

「楽しい家、個室に閉じこもらずリビングに家族が集える生活、光や風など自然を身近に感じる事の出来る家」そんなクライアントの気持ちを形にしました。敷地は川沿いの扇状をした南西に開いた角地、川を挟んだ向いは雑木林の繁る斜面の上に生活道路がある環境でした。この敷地はクライアントの望む自然を身近に感じる事の出来る土地でありましたが、敷地形状、生活道路からの視線、進入路や隣地とのとの高低差などいくつかの課題もありました。この環境の中で目標としたコンパクトな家づくりは、コストを押さえる目的だけでなく、レベルを変えながら空間が連続するワンルームのような楽しい空間を実現しました。

  • 所在地:熊本県
  • 敷地面積:219.84㎡
  • 建築面積:57.140㎡
  • 延床面積:82.590㎡
  • 主体構造:木造
  • 階数:地上2階建
  • 写真:岡本 公二
福岡の住宅建築

KMT

現在は緑の多い恵まれた環境ですが、既存のマンションや東・南側の空地には集合住宅の計画があり、どの包囲にも開ききってしまうことが難しい状況でした。
そのためラジエタ―のフィンのように壁を一方向に積層させ、その間に出来たくぼみが身を隠す場をつくり、居住者が開放感と安心感を同時に感じることが出来るよう計画しました。内外共にクライアントの好みのモノトーンでまとめられています。

  • 所在地:福岡県
  • 敷地面積:311.00㎡
  • 建築面積:126.42㎡
  • 延床面積:226.62㎡
  • 主体構造:RC造
  • 階数:地上2階建
  • 写真:岡本 公二